HSAB則と鉱床学
無機化学においてHSAB則というのがあります。これはイオンを”硬いイオン”、”中間的なイオン”、そして”やわらかいイオン”に分けたもので、によって提唱されました。硬いイオンは電荷密度が高いイオンで、電気陰性度が小さい金属の多くは硬いイオンに分類されます。また、やわらかいイオンは電荷密度の低いイオンで、これに分類される金属イオンは金属元素のなかで相対的に電気陰性度が大きいものです。
そして硬い陽イオンと硬い陰イオン、中間的な陽イオンと中間的な陰イオン、やわらかい陽イオンとやわらかい陰イオンは反応性、親和性が高いという理論がHSAB則です。
HSAB則によって鉱床形成に関係する主なイオンを分類すると次のようになります。
硬いイオン:
中間的なイオン:
やわらかいイオン:
これを見て鋭い方は気づいたかもしれませんが中間的なイオン、やわらかいイオン同士は同じ鉱床中に産出することが多いです。これは中間的なイオンは中間的なイオンであるが、やわらかいイオンはやわらかいイオンであるが鉱床の形成に大きくかかわっているからではないかといわれています。
このように金属イオンなどの挙動も鉱床学では重要になってきます。ただし、全てのタイプの鉱床でこれが応用できるというわけではなく、例えば金鉱床ではイオンが鉱床形成にかかわってくることも多いとされています。あくまでもHSAB則の傾向が見られるという程度に考えておくと鉱物採集をするときもまた違った視点から観察が出来て面白いかもしれません。
今日の一枚
福岡県福岡市長垂のリチウムペグマタイトから産出したポルックス石
()。リチア雲母()を伴う。